Lumetriカラーを使用したカラーコレクション/Adobe After Effects CC 2019

カズノコ(@kazunokoblog)です!今回は、After Effectsを使用したカラーグレーディングの方法について扱おうと思います!After Effectsでも総合的なカラーグレーディングが可能です。この記事では、映像編集ソフトAfter EffectsでLumetriカラーパネルを使用したカラーグレーディングの方法について解説します。
もくじ
カラー・コレクションとは
カラー・コレクションとは、映像作品において映像の色調を調整する作業のことを言います。特に実写映像では場面や時間によって光の色味がかなり違ってくる。実写映像を編集する際、違う色味になってしったカットを補正する役割が必要です。カラー・コレクションの後処理を加えるデジタル映像素材は、Log撮影と呼ばれる色情報の多い特殊なファイル形式で撮影される。ちなみに、近年ではフレームレートをあえて24fpsに変更するなど、補正の範疇を超えてくるような編集作業を総称して、「カラーグレーディング」と呼ぶそうです。一般的に、カラー・コレクションを行うソフトウェアは「DaVinci Resolve」「EDIUS」「Media Composer」などが有名です。あの有名Adobe社からも2017年まで「Adobe SpeedGrade CC」というカラー・コレクションに特化したアプリケーションがありましたが、Adobe Premiere Pro CCとAdobe After Effects CCに「Lumetriカラー」というカラー調整可能なエフェクトパネルができたことから「Adobe SpeedGrade」は廃止になりました。そこで今回は、Adobe After Effects でLumetriカラーを使ったカラー・コレクションの方法についてお伝えします。
Lumetriカラーの適用
前述と重複する箇所もありますが、Lumetriカラーは映像のカラー・コレクションを詳細に設定することのできるエフェクト機能です。それではまず、カラー・コレクションをしたい素材をAfter Effectsに読み込みます。
今回使用する素材の詳細は以下の通りです。
撮影機材 | iPhone SE |
撮影ソフト | FiLMiC Pro |
撮影詳細 | ISO感度 229、シャッタースピード 1/30、絞り F2.2、WB Auto |
収録モード | Log V2 |
天気 | 曇り |
さて、次にLumetri Colorを適用していきます。
Lumetri カラーは「エフェクト<カラー補正」から選択することができます。適用すると下記のような項目が出てきます。
Lumetriカラーは「基本補正、クリエイティブ、トーンカーブ、カラーホイール、HSLカセンダリ、ビネット」から構成されています。1からカラー設定するのも良いのですが、Log撮影された映像データは特に「基本設定<LUT」からプリセットでイメージのグラフィックコントラストの状態のものを選択し、その後「クリエイティブ<Look」でさらにイメージに近い色調のものを選択し、最後に各項目で微調整するのが最も効率的だと思います。
LUTとクリエイティブLookの違い
では、「基本設定のLUT」と「クリエイティブのLook」の違いについてお話します。まず、基本設定のLUTは、のっぺりした色のない映像を普通の見た目にする作業です。見せる映像として最低限のグラフィックにする作業といっても良いでしょう。では、「クリエイティブのLook」は普通の映像に色合いを調整して好みの色に仕上げていく作業です。ちなみにLUTはLook Up Tableの略語です。LUTは様々なメーカーで発売・配布されていたり、インターネットで無料配布されているものも多いのでダウンロードして好みの色を出していくのも良いかもしれませんね。ただし、メーカーなどの出しているLUTはすでにある程度色補正がされているものも多いので、さらにクリエイティブLookを適用する必要がないことも多いです。
それでは次に、After Effects CC 2019の標準エフェクトに搭載されているLUTとLookのプリセットについて紹介します。
LUTのプリセット紹介
それではAfter Effects CC 2019に標準搭載しているLUTを紹介します。
ALEXA_Default_LogC2Rec709
AlexaV3_K1S1_LogC2Video_DCIP3_EE
AlexaV3_K1S1_LogC2Video_REC709_EE
AMIRA_Default_LogC2Rec709
ARRI_Universal_DCI
ARRI_Universal_HD
D-21_delogC_El0200_B1
Phantom_Rec709_Gamma
今回は、最もフラットなコントラストが出たプリセットであるPhantom_Rec709_Gammaを適用し、下記の通り微調整を行いました。
Lumetriスコープの見方
色合いがフラットになっているかを見るためには、Lumetriスコープを参照するのが最適かと思います。Lumetriスコープを表示させるには、「ウィンドウ<Lumetriスコープ」を選択します。
Lumetriスコープの画面上で右クリックをすると、様々な種類のスコープの表示を選択することができます。その中でも私は、「プリセット<パレードRGB」を参考にしながら作業しています。基本となる赤、緑、青の色調を視覚的に観察することができるからです。
Lookのプリセット紹介
次に、After Effects CC 2019に標準搭載しているクリエイティブLookのプリセットを紹介します。今回は、LUTを下記のように設定し、Lookのプリセットを適用していきますので参考にしてみてください。
LUTプリセット | Phantom_Rec709_Gamma |
色温度 | 0.0 |
色かぶり補正 | 0.0 |
露出 | 0.3 |
コントラスト | 28.0 |
ハイライト | 38.0 |
シャドウ | -46.0 |
白色系 | -16.0 |
ブラック系 | -37.0 |
彩度 | 100 |
CineSpace2383sRGB6bit
Fuji ETERNA 250D Fuji 3510 (by Adobe)
Fuji ETERNA 250D Kodak 2395 (by Adobe)
Fuji F125 Kodak 2393 (by Adobe)
Fuji F125 Kodak 2395 (by Adobe)
Fuji REALA 500D Kodak 2393 (by Adobe)
Kodak 5205 Fuji 3510 (by Adobe)
Kodak 5218 Kodak 2383 (by Adobe)
Kodak 5218 Kodak 2395 (by Adobe)
Monochrome Fuji ETERNA 250D Kodak 2395 (by Adobe)
Monochrome Kodak 5205 Fuji 3510 (by Adobe)
Monochrome Kodak 5218 Kodak 2395 (by Adobe)
SL BIG
SL BIG HDR
SL BIG LDR
SL BIG MINUS BLUE
SL BLEACH HDR
SL BLEACH LDR
SL BLEACH NDR
SL BLUE COLD
SL BLUE DAY4NITE
SL BLUE ICE
SL BLUE INTENSE
SL BLUE MOON
SL BLUE STEEL
SL CLEAN FUJI A HDR
SL CLEAN FUJI A LDR
SL CLEAN FUJI A NDR
SL CLEAN FUJI B
SL CLEAN FUJI B SOFT
SL CLEAN FUJI C
SL CLEAN KODAK A HDR
SL CLEAN KODAK A LDR
SL CLEAN KODAK A NDR
SL CLEAN KODAK B
SL CLEAN KODAK B SOFT
SL CLEAN KODAK B ULTRASOFT
SL CLEAN KODAK C
SL CLEAN KODAK HDR
SL CLEAN STRAIGHT HDR
SL CLEAN STRAIGHT LDR
SL CLEAN STRAIGHT NDR
SL CROSS HDR
SL CROSS LDR
SL CROSS NDR
SL GOLD HEAT
SL GOLD ORANGE
SL GOLD RUSH HDR
SL GOLD RUSH LDR
SL GOLD TOBACCO
SL GOLD WESTERN
SL IRON HDR
SL IRON LDR
SL IRON NDR
SL MATRIX BLUE
SL MATRIX GREEN
SL MATRIX MARS
SL NEUTRUL START
SL NOIR 1965
SL NOIR HDR
SL NOIR LDR
SL NOIR NOUVELLE
SL NOIR NOUVELLE RED
SL NOIR RED WAVE
SL NOIR TRI-X
Lumetriカラーのプロパティ解説
以上の操作でLUTのプリセット選択とクリエイティブLookの選択が終わりました。それでは最後に微調整をかけていくために、各プロパティの解説をします。
ハイダイナミックレンジ
オンにするとハイダイナミックレンジ(HDR合成機能)を使用した設定になります。カラー設定32btで適用可能です。
基本補正
輝度、明度を中心に画像の基本的な補正を行います。
① | アクティブ | オン/オフで設定の表示/非表示を切り替える。 |
② | LUTを入力 | LUT(Look Up Table/参照テーブル)プリセットから設定を選択する。(ハイダイナミックレンジ[オフ]で適用可能) |
③ | ホワイトバランス | 映像の光源の色合いを設定する。
[WBセレクター] カラーピッカーまたはスポイトでホワイトバランスの基準色を選択する。 [色温度] 色温度スライダーで色味を調整する。数値が小さいと寒色系(青色系)になる。数値が大きいと暖色系(赤色系)になる。 [色かぶり補正] 色かぶり補正スライダーでグリーンとマゼンタの色の濃度を補正する。数値が小さいとグリーンが強くなる。数値が大きいとマゼンタが強くなる。 |
④ | トーン | [露出]
映像の明るさを設定する。 [コントラスト] 映像のコントラストの強さを設定する。 [ハイライト] 映像の中の明るい領域の強さを設定する。 [シャドウ] 映像の中の暗い領域の強さを設定する。 [白色系] 白レベルの量を設定する。 [ブラック系] 黒レベルの量を設定する。 [HDR 鏡面反射レベル] ハイダイナミックレンジがオンの場合に、映像内の鏡面反射の強さを設定する。 [リセット] トーンの設定を初期設定に戻す。 [自動] WBセレクターのカラーを基準に自動的にトーンを設定する。 |
⑤ | 彩度 | 映像の彩度の強さを設定する。 |
クリエイティブ
ハイダイナミックレンジ[オフ]で適用することができます。[Look]プリセットで基本的な色味を選択し、微調整を行います。
① | アクティブ | オン/オフで設定の表示/非表示を切り替える。 |
② | Look | [Look]プリセットから選択し適用することができる。 |
③ | 強さ | [Look]で適用した効果の強さを設定する。(適用範囲:0.0~200.0) |
④ | 調整 | イメージのカラー調整を行う。
[色あせたフィルム] 古いフィルムのような効果を加える。 [シャープ] 映像のエッジの強さを設定する。 [自然な彩度] 肌色の彩度を上げすぎずに彩度を調整する。 [彩度] 映像の彩度を設定する。 [明暗別色補正] 色相ホイールの中心をクリック&ドラッグしてシャドウとハイライトの色合いを調整する。 [色合いのバランス] 映像の中のグリーンとマゼンタの色合いを調整する。 |
トーンカーブ
RGBカーブ、色相/彩度の曲線で明度とコントラストを中心に調整する。
① | アクティブ | オン/オフで設定の表示/非表示を切り替える。 |
② | HDRレンジ | ハイダイナミックレンジがオンの場合に、RGBカーブの範囲を[0~10000]に拡張することができる。 |
③ | RGBカーブ | マスター、赤、緑、青それぞれの下部グラフを調整することで輝度とチャンネル階調領域を設定することができる。 |
その他に、「色相/彩度カーブ、色相 vs 色相カーブ、色相 vs 輝度、輝度 vs 彩度、彩度 vs 彩度」の二次元調整パネルがある。これらは全てRGBカーブと同様に線上を複数箇所クリックし、曲線を変形させることで色合いを視覚的に調整することができます。
カラーホイール
ミッドトーン、シャドウ、ハイライトの各強度を調整する。
① | アクティブ | オン/オフで設定の表示/非表示を切り替える。 |
② | HDR白レベル | ハイダイナミックレンジがオンの場合に、白レベルの数値を[100]から[1000]の範囲で設定するできる。 |
③ | ホイール | シャドウ、ミッドトーン、ハイライトの強度を色相ホイール内をクリック&ドラッグして調整する。(ハイダイナミックレンジがオンの場合は[HDR 鏡面反射レベル]が表示される。) |
HSL カセンダリ
映像内で指定したカラーの範囲を調整します。
① | アクティブ | オン/オフで設定の表示/非表示を切り替える。 |
② | キー | ここでは、特定のカラーを選択し、選択した色の調整を行う。
[カラーを設定] 調整するカラーを映像からスポイトで選択する。または、カラーピッカーで色を指定する。 [カラーを追加] 調整するカラーの周辺など、追加したい色を映像からスポイトで選択する。または、カラーピッカーで色を指定する。 [カラーの削除] 調整するカラーの周辺などで使用しないカラーを映像から選択する。 [HSL Sliders] [キー]で選択したカラーをH(色相)、L(彩度)、S(輝度)それぞれのスライダーで調整する。[マスクを表示] オンにすると、選択したカラーがマスクで表示される。マスクのカラーを[カラー/グレー][カラー/黒][白/黒]から選択する。映像の全体の色味から見やすい色を選択するといいでしょう。 [マスクを反転] マスクをオンにしている状態で、表示を反転させる。Photoshopの自動選択ツールのマスクを選択で切り抜きを行うときと同じような機能です。選択している色を反転させて浮き出してくれます。 [リセット] HSL Sliders をリセットする。 |
③ | リファイン | [クロマノイズ除去]
選択したカラー範囲からノイズを除去する。 [ブラー] 選択したカラー範囲の境界をぼかす。 |
④ | 補正 | [Color Wheels]
選択したカラーを色相ホイールで調整する。視覚的な調整が可能です。 [色温度] 選択したカラーを寒色〜暖色系のスライダーで調整する。-100~100でマイナスになるほど寒色系(夜っぽい、冬っぽい感じ)、プラスになるほど暖色系(夕方っぽい感じ)になる。 [色かぶり補正] 選択したカラーからグリーン〜マゼンタの色濃度を補正する。 [コントラスト] 選択したカラーのコントラストを調整する。 [シャープ] 選択したカラーのエッジの強さを調整する。 [彩度] 選択したカラーの彩度を調整する。 |
ビネット
映像のエッジを暗くして、トイカメラで撮影したような効果を加えます。カメラでいうところの周辺減光を調整するような項目です。
① | アクティブ | オン/オフで設定の表示/非表示を切り替える。 |
② | 適用量 | エッジの明るさを設定する。 |
③ | 中間点 | 暗くする範囲を設定する。([角丸の半径]内での範囲) |
④ | 角丸の半径 | 暗くするエッジのサイズを設定する。 |
⑤ | ぼかし | エッジの境界のぼかしを設定する。 |
まとめ
今回はAfter effects CC 2019 でLumetriカラーエフェクトを使用したカラー・コレクションの方法、エフェクト詳細説明を行いました。現像後のポストプロダクションからAfter Effectsを使用することは十分可能であることがわかりました。もし、Blackmagic Design社のカメラで現像込みでのカラー・コレクションからCG作成を行う場合は「DaVinci Resolve」の有料版を使用することをお勧めします。なぜなら、ワークフローが簡略化するからです。または、現像のみ「DaVinci Resolve」有料版、または無料版で行い、CG作成・カラーコレクションなどの現像以外のポスプロ業務をAfter Effectsで行うのも良いと思います。
おまけ
ちなみに、After Effects CCで作成したLUTとクリエイティブLookはアニメーションプリセットから保存・読み込みをすることが可能です。[別記事:LUTやLookの保存・読み込み方法/Adobe After Effects CC 2019]にて解説していますので、アニメーションプリセットでの保存方法や読み込み方法を知りたい方は合わせてチェックしてみてください。